宗教弾圧を強める中国 河南省で多くの家庭教会が閉鎖

米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、中国中部に位置する河南省では、当局が無認可の宗教団体に対する圧力を強めており、少なくとも三分の二のキリスト教会を閉鎖に追いやろうとしているという。

米サンフランシスコに本部を置く中国人キリスト教徒正義連盟の牧師、劉貽(リュウ・イー)氏は、8月から河南省でキリスト教教会に対する抑圧が激化し、南陽市では9月5日早朝に少なくとも4つの教会が襲撃されたと明らかにした。 

劉氏自身は米国におり、中国のある地方教会の情報提供者の話として、数十人の警察官と地方政府職員が、身分を明かさず捜査令状なしで教会に侵入したと語った。

キリスト教教会の閉鎖

警察官と地方政府職員は、教会の内外に設置してあった十字架を撤去し、壁に書かれていたスローガンを塗りつぶし、教会の所有物を破壊、没収すると、教会の入り口を封印した。

劉氏は、抵抗した信者は殴られたり連行されたりしたと語っている。

ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、河南省と中央の警察当局と宗教事務部門にこの事件に対するコメントを求めようと試みたが、回答は得られていないという。

今年2月から、河南省で数百の家庭教会が閉鎖に追い込まれていることがすでに報じられている。河南省当局は新たに公布された宗教事務に関連する法規を高圧的に適用している。家庭教会は政府から認可された宗教団体に属していない。

劉氏は「南陽市で発生した鎮圧事件は省レベルで行われたものだ。教会の十字架を撤去する以外にも、河南省当局は多くの地方キリスト教教会の統合を計画している。ある地域の牧師は私に、教会の三分の二が閉鎖されるだろうと言った」と語っている。

広東省と黒竜江省でも最近、同じような教会襲撃事件が発生している。

浙江省では、14年から16年の2年間にわたり、当局が弾圧政策を実施し、教会屋根の十字架の撤去を強行した。

また、新疆ウイグル自治区では、100万人を超えるイスラム教徒が「再教育センター」という名の収容施設に送られたと報じられている。

今年6月初めには、チベット仏教の僧侶と尼僧がラサで3日間の研修に参加し、「彼らの政治的信念を強化する」ために中央政府の宗教関連政策と「中国の特色ある社会主義」を学習するよう求められた。  

昨年の第十九回全国代表大会で習近平主席は、中共は党の宗教事務政策を貫徹すると協調し、「中国の宗教は中国の原則に立脚しなければならないという原則を維持し、宗教を積極的に指導し、宗教を社会主義社会に適応できるようにする」と発表した。

劉牧師は、たとえ政府公認のキリスト教の布教や布教者であっても厳格な政治審査に直面しており、政府が行う中国社会主義の核心的価値観に関する試験や、習近平思想試験で不合格となった場合、宗教活動の継続を禁止される恐れがあるとしている。

政治の道具

劉牧師は「当局は全国各地の教会の牧師や布教者に対し、共産党の政治宣伝活動を行うよう迫っている。中共の意識形態と思想コントロールには背筋が凍る。教会の牧師と布教者はさらに、教義の中で共産党の脅威となり得る部分や共産党に反対する部分を削除するよう求められている」と語っている。

9月4日、中国各地の家庭教会約30カ所の牧師がソーシャルメディアを通じて共同声明を発表し、中国当局に残虐な鎮圧活動を停止するよう求めた。彼らは「このような野蛮な行為は文化大革命以来、初めてのことだ」と表明している。

大勢の人も中国や外国のソーシャルメディアを通じて中国政府のキリスト教徒弾圧行為を激しく非難している。あるネットユーザーは「中国当局の行為は、中共がキリスト教徒に正式に宣戦布告したに等しい」と投稿している。

中国大手SNSの微博(ウェイボー)では、あるユーザーが「彼らは今まさに悪魔の命令に従い行動している」と投稿し、別のユーザーは「神よ、こうした無知な人々を憐れんでください。彼らは真理を知らないのです」と自身の心情を吐露している。

信仰心は揺るがない

中国の憲法には信教の自由の保障が明文化されているが、こうした「保障」は信者にとっては絵に描いた餅に過ぎない。

匿名を条件にボイス・オブ・アメリカの取材に答えた中国のキリスト教信者は「1人のキリスト教徒として、自分の信教の自由が保障されていると感じられるわけがない。警察や現地の宗教事務部門は私たちの教会を抑圧し続けている。私の信教の自由がどうやったら保障されるのか、どうか教えてほしい」と、やるせない思いを吐露している。  

以前は弁護士だったというこの人物は、「新たに改訂された宗教事務法規は違法なものだ。なぜなら中国の憲法、法律、法規に規定されている行政処罰規定、それに国際人権法にも違反しているからだ」と述べたが、このような苦難や抑圧にさらされても、中国のキリスト教徒の信仰心が揺らぐことはないと信じていると続けた。

この人物は、当局の抑圧政策は逆効果にしかならないと指摘している。文革時代のもっと悲惨な経験が示しているように、中国のキリスト教徒の数は抑圧政策により逆に増加している。

統計によると、現在の中国のキリスト教徒信者数は約7,000万人。これは中国の共産党員数8,800万人に迫る数である。

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