【漢方の世界】華佗―100歳まで生きた秘訣に迫る

名医で知られる華佗であるが、実は遥か2000年も昔に100歳まで生きた、いわゆる養生の達人でもあった。しかも目や鼻が健康で、歯も丈夫だったそうだ。健康で長生き、それはどの時代の誰にとっても、共通の願いにほかならない。その秘密に迫る前に、まずは華佗の弟子についての逸話をご紹介しよう。

華佗には多くの弟子がいたが、今回取り上げるのは2人。まずは呉普(ごふ)である。生薬の面で頭角を現した呉普が残した書が「呉普本草」という本である。この呉普に語ったとされ、後世にまでずっと伝わっている華佗の言葉として「人は働くべきだが、働きすぎ、つまり過労はいけない」がある。働きすぎれば細胞の代謝が過剰になり、体に無理が出る。ほどよい労働を続けていれば、まるでドアの回転軸のように、ずっとさびることもなく良い状態を保てるからだ。そして華佗が授けたのが「五禽劇」である。文字通り5つの動物、すなわち虎、鹿、猿、クマ、鳥の動作を真似るのだ。動きの激しいものや静かなもの、ゆったりとしたものや速いものなどが組み合わさっている。呉普は華佗の伝えた五禽劇を実践した結果、百歳くらいまで長生きしたとされる。
そしてもう1人が樊阿(はんあ)である。樊阿は鍼灸に優れており、通常の場合の鍼の10倍近く、すなわち10センチもの深さにまで鍼を打つことができた。もちろん、これは内臓の位置を熟知していたからだが、レントゲンもCTもなかった時代、実に不思議なことである。話を戻すと、この樊阿に対して華佗が伝授したとされるのが漆(うるし)と青黏の歯を使った薬である。そしてこの樊阿も100歳まで長生きしたそうだ。
医者の不養生とはよく聞く言葉だが、華佗――この古代の名医は逆に養生の秘訣を残し、それを自ら実践してみせた。胡先生は優れた医者の条件として「単に病気を治すだけではなく、患者が2度とその病気にかからないようにアドバイスをし、手引きをすることができる」と常々口にしている。華佗はそれを自身の行動によって、人々に伝えたのであろう。
 
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