【動画ニュース】フェイクニュースによる台湾選挙への介入専門家「非常に危険」

11月24日の台湾統一地方選で与党の民進党が大敗し、多くの県・市長の座を失う結果となりました。選挙前には結果に影響を与えることを目的としたフェイクニュースがネット上に氾濫し、国家安全保障部門の関係者は、台湾の今回の選挙結果は中国が選挙活動に介入した成績表であると警告しています。評論家も、台湾の大型選挙の際には中国共産党が必ず干渉すると指摘しています。

高雄市長に立候補した台湾民進党の陳其邁(ちん・きまい)氏は11日、旗山区(きざんく)で大規模な選挙活動を行い、主催者によると3万人が来場しました。しかしネット上には一時、進行役の邱議瑩(きゅう・ぎえい)氏が集まった人々に対し支持を求めて泣きついていたと主張する出所不明の動画が投稿されました。

この動画はすぐに複数のメディアに転載されましたが、陳陣営の民進党立法委員、管碧玲(かん・へきれい)氏が自身のフェイスブックアカウントに、実際の動画をアップロードしました。

高雄市長選では、国民党の韓国瑜(かん・こくゆ)氏が当選しましたが、生中継の最中に新聞の切り抜きを取り出し、中国からいかなる金銭的支援も受けていないと表明しました。

台湾大学国家発展研究所法学博士  曽建元氏

今回の選挙では凄まじいフェイクニュース問題が生じた。中国のサイバー軍によるもの以外に、台湾本土でもいわゆるインフルエンサーが、フェイクニュースを多数捏造していたことが明らかになった

台湾国家安全局の陳文凡(ちん・ぶんぼん)副局長は19日、「中国が台湾世論を介入操作しているのか」との立法委員の質問に対し、「疑う余地はない」と答えました。また別の立法委員が、国外勢力が選挙に介入し、資金提供や、デマ、フェイクニュース、中傷の流布、ネット上の中傷誹謗を行っていることを国家安全局は把握しているのかと尋ねたところ、はっきりと「把握している」と答えました。

国家安全保障部門の関係者は、選挙になると中国共産党は大きな世論戦と心理戦を仕掛けると語っています。サイバー軍がフェイクニュースを流し、中国メディアに蔡政権の政策をこきおろすよう指示すると同時に、親中派の台湾メディアにも協力を要求しました。一部台湾メディアはクリック率を挙げるため、確認もせずに「コピペ」によりフェイクニュースを世論に広く拡散すると指摘しています。

台湾大学国家発展研究所法学博士  曽建元氏

現代は情報が瞬時に伝わる。台湾でも情報統制は行われていないため、この自由な環境を利用して自由な秩序を乱そうとする人々には、この環境から世論を操作する余地がある

米国在住の時事評論家  藍述氏

中国は台湾の総選挙や統一選などすべての選挙に干渉する。台湾の大型選挙であれば、中国は介入して干渉する。これは昔からそうだ

蔡英文(さい・えいぶん)総統は、今回の選挙運動中に「ある力」が我々の口を塞ごうとしており、台湾は今、あらゆる場所にフェイクニュースが入り込むという危機に直面していると率直に述べ、「もし我々が屈服すれば、民主主義が転覆する」と危機感をあらわにしました。その上で総統は有権者に対し、投票数を盾にして台湾の民主政治を守ろうと呼びかけました。

米国在住の時事評論家  藍述氏

中国共産党は自身の政治体制に全く自信を持っていない。中国は台湾の民主主義社会を恐れており、民主的な選挙が成功するたびに、中国の共産党体制は無言で鞭打たれている。台湾の選挙により中国の人々は民主主義のメリットやその優位性に気づく。だから中国政府は恐れている

「米国在台湾協会」(AIT)のジェームズ・モリアーティ(James Moriarty)主席は、以前台湾メディアTVBSの取材を受けた際に「台湾で外部勢力が世論操作を試み、フェイクニュースを流しているのは明らかだ。これは危険なことだ」と述べています。このニュースは報道後、TVBSのネットサイトから削除されました。

党・政府機関の関係者は、「以前は、中国は台湾の選挙に直接介入していた。例えば1996年の総統選の時には中国は台湾海峡へミサイルを発射したが、逆に反発を招いた。今、中国は表向きこそ黙っているが、水面下では「シャープパワー」を使って匿名性、欺瞞性手段により、フェイクニュースと金銭による買収を駆使して台湾の選挙に介入している」と述べています。

米国在住の時事評論家  藍述氏

中国の取る手段が年とともに変化してきただけだ。ブルームバーグニュースが少し前、今回の選挙の1~2か月前に、台湾をターゲットとする中国からのハッカー攻撃がかなり激化したと報じている

中国内部の事情通は、中国の対台湾部門は中国政府が認可した特定の立候補名簿を提供し、中国に投資している台湾企業に対し、候補者への支持を実際の行動で示すよう求め、票集め以外にも、リストアップされた候補者への寄付を要求していると明かしています。中国はまた、台湾のオピニオンリーダーや地元有力者、宗教関係者、親中派の政党や団体、特定のメディアにわいろを渡しています。

国家安全保障部門の関係者は、今回の台湾の選挙結果は、中国が選挙活動に介入した成績表だと警告しています。

 

 
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