【動画ニュース】中国人留学生がフェラーリで押しかけ愛国を叫ぶ 当局が動画を突然削除

中国で「富二代」と呼ばれる富裕層の子女や、「官二代」と呼ばれる政府高官の子女が、海外でフェラーリに乗って「愛国」「香港警察支持」を訴える動画がインターネットに公開され、中国国内にまたたく間に広まりましたが、突然削除されました。

8月17日、カナダのトロント旧市役所前で開かれた、「逃亡犯条例」改正反対運動を支援する香港人学生の集会に、中国人留学生が中国国旗をつけた高級車で乗り込むと、参加者の前で「愛国主義」を誇示しました。目撃した人は「富二代、官二代らは集会現場で中国人留学生を取り仕切って、香港人留学生を何度も『貧乏人』と罵っていた」と語っています。

「高級車愛国」の動画はインターネットで繰り返し再生されましたが、富二代らの思惑どおりに香港人に衝撃は与えられず、逆に中国にいる家族らを震え上がらせる結果となりました。現在、関連の動画は中国国内で完全に削除されています。

カナダ在住の中国人作家 盛雪さん
「中国当局はこうした情報が国内に流れるのを許せない。これらの子供らの海外での行動によって、人々がその両親の身分や地位、財産の出どころなどに注意を向ける可能性があるからだ。この子たちは海外で数百万、数千万元の高級車が買えるが、親の資産の出どころはどこ?」

海外のソーシャルメディアではまだこれらの動画が視聴でき、大量の書き込みも行われています。あるツイッターユーザーは「これらの富二代は中国のために集会を行っているのではなく、彼らの両親のための特権集会を開いている」「反腐敗運動の手がかりとなる、飛んで火にいる夏の虫だ」とコメントしています。

中国のフリーライター 黄金秋さん
「当然これは反腐敗運動のよい手がかりとなる。だが関連部門は懸命に削除している。これが何を意味しているか?彼らは腐敗の手がかりを直ちに調査しようと思ってはおらず、急いでこの件を鎮火させようとしているのだ。だからこれらの投稿を削除したい。庶民にこうしたものをもう見せたくないし、再考してほしくもないのだ」

ネットユーザーからは「高級車も持っていないくせに、愛国主義を主張していいのか?」、「賃貸アパートに住む五毛党たちよ、よく見るがいい。彼らこそが真に愛国を語る資格がある者たちだ」と揶揄されています。

中国のジャーナリストでフリーライターの黄金秋(こう・きんしゅう)さんは、中国におけるいわゆる「愛国」は今、三つの階層に分かれていると分析しています。

中国のフリーライター 黄金秋さん
「一つ目の階層は貪欲な特権階級、つまり高官とその家族だ。彼らは表面的には愛国的だが、実際にはこの腐敗体制を愛しているにすぎない。二つ目の階層は専門家やエリートで、この中産階級は正常な思考を持った人々だ。彼らは本当に国を愛しており、この社会を変革させる必要があると知っている。だがより多くの人々のグループがある。本当に搾取され、惨めな状態にいるのに、その自覚のない人々だ」

黄金秋さんは「この三つ目の階層の『愛国グループ』は映画『戦狼(ウルフ・オブ・ウォー)』や『中国侮辱行為』などの宣伝を使った扇動から簡単に影響される。今回の『高級車愛国』の動画も彼らに影響を与えた。だがそれは逆効果となった」と語っています。

中国のフリーライター 黄金秋さん
「ネット上でも嘲笑されている。例えば『私も愛国行動をしたいが、フェラーリを持ってない』とか。自主的に『五毛党』をやっていた人々や毛沢東左派が突然気づいた。つまり、この体制は特権階級の子女に、海外で威張りちらし、金持ちを鼻にかけ、やりたい放題する機会を与えているのだと。よってこの問題はある意味、これまでの多くの低層部の人たちを目覚めさせており、この社会の不公平さは体制全体によって引き起こされていることを認識させたと私は考えている」

カナダ在住の中国人作家 盛雪さん
「何を愛国と呼ぶのか。まず現在の中国は根本的に正常な意味での国家ではなく、中国共産党の一党独裁体制にコントロールされている状況にある。では、もし愛国を叫ぶのならば、中国の自由、人権、民主主義、法治国家を推し進めるものでなければならない。もしこの政権の擁護を訴えるものであるなら、それは愛国ではない」

「高級車愛国」の動画が直ちに削除されたことは、中国政府が香港問題について民衆感情を扇動していたという弱点も反映しています。最近、似たような現象が頻繁に起こっています。例えば、ジャッキー・チェンが自身を「国旗の守り手(愛国主義者)」と称し、香港のデモに対する立場を表明しましたが、ある漫画家によって「ジャッキー・チェンと共に国旗を護る。天安門広場で会いましょう」との偽物の宣伝漫画が配布され、多くの五毛党が騙されました。のちに当局が気づき、緊急削除しました。また環球時報の記者が香港国際空港で殴られた事件を党メディアは盛んに報じましたが、この記者がネットユーザーから国家安全部職員だと疑われてからは、やはり突然トーンダウンしました。

 
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