「天安門事件以降最も深刻な時期」ヒューマン・ライツ・ウォッチ

国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は近日、世界100か国以上の人権状況を調査した「2021年世界人権報告書」を発表しました。報告書では、感染状況の隠蔽と封鎖、内部告発者への抑圧、香港民主化運動の鎮圧など、中国共産党による深刻な人権侵害を列挙し、中国の人権状況は最も深刻な時期に入ったと批判しています。

報告書では、中国に関する部分で、感染状況の封鎖、内部告発者への抑圧、香港民主化運動の鎮圧、人権活動家や人権派弁護士への抑圧、新疆やチベットにおける少数民族に対する迫害などについて取り上げています。

報告書では、中共ウイルス感染拡大の初期段階において中共は積極的に対策を講じなかっただけでなく、関連情報を隠蔽し、ヒトからヒトへの感染の可能性も否定したと指摘しています。

武漢と新疆ではロックダウン期間中、当局による地元医療機関への支援、食料をはじめとする生活必需品の供給なども不十分でした。

また、武漢における感染状況の実態について報じた市民ジャーナリストの張展(ちょう・てん)氏、陳秋実(ちん・しゅうじつ)氏、方斌(ほう・ひん)氏らを拘束し、また国際社会が要請した中共ウイルスの起源解明のための武漢での現地調査を過去数回にわたり拒否してきました。

さらに昨年6月、中共が香港で国家安全維持法を強制的に施行させたことにより、羅冠聡(ネイサン・ロー)氏などの民主活動家は海外に亡命しました。台湾に亡命を試みた12人の抗議者が中共当局に拘束され、いまだ釈放されていません。

また香港警察は、香港紙・蘋果日報(アップル・デイリー)の創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏、立法会(議会)元議員の李卓人(り・たくじん)氏など、多数の民主活動家を逮捕しました。

中国国内では、依然として人権活動家や人権派弁護士を弾圧しており、昨年初めには人権弁護士の丁家喜(てい・かき)氏が拘束されました。

昨年2月、人権活動家の許志永(きょ・しえい)氏が「国家政権転覆罪」で逮捕されました。

昨年3月、芸術家で人権活動家の王蔵(おう・ぞう)氏と彼の妻が当局によって拘束されました。

昨年4月、人権派弁護士の王全璋(おうぜんしょう)氏が不当に4年半監禁されてから釈放されましたが、強制的に故郷に送られ、隔離させられました。後に、当局の監視下において、北京の家族のもとへ戻りました。

昨年6月、人権派弁護士の余文生(よ・ぶんせい)氏が「国家政権転覆罪」で起訴され、懲役4年の有罪判決を言い渡されました。

報告書ではまた、2017年以来、新疆には260以上の大型収容施設が新設され、中共当局が大量のウイグル人などの少数民族を強制収容していることを証明していると指摘しました。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当部長であるソフィー・リチャードソン(Sophie Richardson)氏は、「北京政府の中国国内における人権侵害は、いずれ世界に影響を及ぼすことになるということを、各国の政府は徐々に認識している。国際社会は、中共が深刻に人権を侵害しているにも関わらず、懲罰から逃れている現状を即座に終わらせるべきだ」と述べました。

 
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