中国自動車産業でも深刻な半導体不足 3か月連続で減産【禁聞】

中国自動車業界のチップ不足は深刻化の一途をたどり、多くの自動車メーカーでは連続3か月で生産台数が半減しています。ディーラー各社もチップ不足の影響を受け受注ができず、中古車市場でも価格が高騰しています。この状態がいつまで続くのかと人々は憂慮しています。

中国の自動車業界では今年の第3四半期から、自動車用チップ不足問題が好転すると見込まれていましたが、実際は悪化の一途をたどっています。新たな自動車用チップ不足問題は、以前よりも深刻化しています。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、半導体サプライチェーンの中でも重要な位置を占めているマレーシアが疫病によって深刻な打撃を受けていると報じました。現地では7月から陽性者が激増し、世界的なチップ不足に拍車をかけ、自動車業界にも新たな問題をもたらしました。

台湾経済研究院の研究員 劉佩真氏
「下半期には自動車用半導体不足が緩和されるとの見方があったが、まさか第2四半期の終わりに東南アジアの感染状況に変化が生じるとは思っていなかった。さらにIDM工場(Integrated Device Manufacturer)の拠点を東南アジアにした飛淩などの大手メーカーでは、自動車用のクローズドβテストのオーダーは実際のところ、供給が妨げられている」

世界のチップサプライチェーンが断ち切られたことで、多くの自動車メーカーが苦しんでいます。中国では「一汽(いーちー)フォルクスワーゲン」がチップ不足のために何度も減産を強いられています。同社の部品サプライヤーの「ボッシュ中国」は、マレーシアにあるSTマイクロエレクトロニクスの工場閉鎖の影響を受け、8月中旬からチップの供給が滞っています。

ボッシュ中国は中国最大の横滑り防止装置(ESP)のサプライヤーで、一汽フォルクスワーゲンだけでなく、BMWブリリアンス、長安汽車、長城汽車などもボッシュのESPシステムを採用しています。

上海フォルクスワーゲンへの電話取材で、同社のほとんどの自動車が在庫切れになっていることが明らかになりました。

上海フォルクスワーゲンの販売スタッフ
「チップが不足しているからだ。多くのモデルは在庫がない。セダンの在庫はほぼゼロだ。予約したとしても、早くても1~2か月はかかる。今は(値段が)高い。チップが不足して車の数が少ないからだ。一部の車の優遇度は小さい」

チップ不足の影響を受け、フォルクスワーゲンやホンダ、日産といった中外合資企業や中国企業では、生産台数を3か月連続で半分に減らさざるを得なくなっています。

小鵬汽車(シャオペン きしゃ)創業者の何小鵬(か・しょうほう)氏はインタビューで、車両一台に約1700個という非常に多くのチップが使われているため、小鵬汽車の複数の協力会社は現在のチップ不足を楽観視してはいないと話しています。

米中ハイテク戦争が始まってから、ファーウェイが米商務省のエンティティリストに収載され、半導体メーカーの「中芯国際(SMIC)」の10ナノメートル以下のハイエンド製品が厳格に制限されるようになりました。かつて海外で熱狂的に企業買収を行っていた「清華紫光(せいか しこう)集団」も破産と再編の危機に見舞われ、中国の「国産チップ」計画が試練に直面しています。自動車用チップはミドルエンドやローエンドのものが主流ですが、中国が自主生産を行っても、チップの供給不足という難題を解決することはできません。

台湾経済研究院の研究員 劉佩真氏
「当然ながら、ミドルエンドとローエンドの比較的成熟した部分では、中国にはまだそれらを提供する方法がある。しかし、自動車用となると安全性に関わり、関連の認証も厳格になる。世界の現在の自動車用半導体のサプライチェーンはやはり欧米のIDM大手が握っているため、中国はこれらのミドルエンド、ローエンドの製造過程で自動車用のチップの生産に力を注いでいたとしても、我々が想像しているほど多くはないし、そのほとんどの用途は通信やその他の半導体市場なのだ」

台湾大学電機工程学部教授の林宗男(りん・しゅうなん)氏は、中国には28ナノメートルのミドルエンドやローエンドの製造技術があるのは確かだが、中共当局の最近の民間企業や言論の自由に対する弾圧は、鎖国と文化大革命を彷彿とさせており、チップ産業に9億5000万元(約162億円)を投入したとしても、5年後に実を結ぶとは思えないと考えています。

台湾大学電機工程学部教授 林宗男氏
「中国が最近行っているインターネットでの締め付けは、実際には過去の内部粛清闘争の道路に向かっている。このような環境において、ハイテクのイノベーションや研究開発は、強大な国家リソースからの援助を受けていたとしても、チップの自主生産の機会はそう多くはないと私は考えている」

台湾経済研究院の劉佩真(りゅう・はいし研究員は、今回のチップ不足の影響を受け、今年全世界で減産になる自動車台数は当初は700万台になると見込まれていたが、850万台に修正されるだろうと予測しています。また、世界最大の自動車消費国であり製造国として、中国経済が影響を受けて失速する可能性があると考えています。

 
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