「習近平は中国の実情を直視していない」=米諮問委員会ヒアリング

最近、米議会の諮問委員会で、今年秋に開催される第20回党大会を控えた中国共産党の今後の動向についてのヒアリングが行われました。ヒアリングでは、ミシガン大学の中国問題専門家が中国共産党が今直面している最大の困難は、内部の問題であるとの認識を示しました。

1月27日に開催された米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会(USCC)」のヒアリングで、中国問題専門家の洪源遠氏は次のように述べました。

ミシガン大学政治経済学部准教授 洪源遠氏
「現在、中共が直面している最大の問題の1つは、官僚が真実の状況を語らないことだと思う。習近平政権が権威主義色を強めたことで、この問題はさらに悪化している。彼らは異論や率直な意見を受け入れていないようだ。 例えば、最近、中国(共)政府から経済に関するネガティブな報道を控えるようにとの通達があった。中共の高官らは、人々が真実を語るのを避ける風潮を作り出し、その結果、良い情報を得ることを自ら否定してしまった。これでは悪循環に陥ってしまうのだ」

洪源遠教授は、大きな政策転換がない限り、中共は現在の道を歩み続けるだろうと述べています。

ミシガン大学政治経済学部准教授 洪源遠氏
「最高指導者が 『真実を語っても良い』と言うまで、変化は起こらない。許されれば、中国の官僚たちは真実を話すようになる。その時に自分たちの問題点、限界、失策に気づくのだ」

洪源氏は、中共指導部は別の有用な情報源を持っているが、それは中国国内からのものではないと述べています。

ミシガン大学政治経済学部准教授 洪源遠氏
「また、今日の中国の高官らは、各国からの国際的な意見という非常に重要なフィードバック源を持っていることも指摘しておきたい。中共指導部は、中国国内の反対意見を封じるために検閲やメディア操作を行うことができるが、世界中の反対意見や批判を封じることはできないのだ」

2000年代初頭、国際社会は中国の権威主義体制の変革を期待していました。当時のビル・クリントン米国大統領は、資本主義の下で中国国内の中産階級が原動力となり、中国経済が飛躍し、中共に対して政治上でも改革を要求するようになると考え、中国の世界貿易機関(WTO)加盟について国際社会に訴えかけていました。

2001年、中国は世界貿易機関に加盟したものの、国内改革は充分に進まず、加盟を後押しした米国の期待は失望に終わりました。

洪源遠教授は中国国内の中産階級の多くは、国営企業に雇われて生計を立てていたため、政治改革を要求するようにはならなかったと指摘しています。

カリフォルニア大学政治経済学部 史宗瀚(Victor Shih)准教授
「中国では独立した中産階級は存在しない。中国で中産階級といえば、政府や国営企業で働く人々が大半を占めている。 故に中国で中産階級といえば、個人商店等のことではない。個人商店を経営している人たちは下層階級に属するのだ」

洪源遠氏は、中国の変化を促すには、まず中国共産党のトップである習近平から働きかける必要があると述べています。

 
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