航空専門家「東方航空の人事に問題があった可能性」

3月21日に中国で発生した東方航空墜落事故は世界を震撼させました。ブラックボックスは2つとも見つかりましたが、当局はまだ調査結果を公表していません。業界に詳しい人物は、事故を起こした航空機の乗務員の人事に問題があったのではないかとして、元をたどれば東方航空の管理問題にも関わると分析しています。

墜落した東方航空MU5735便では、機長、副操縦士、操縦士の3人で運行が行われていました。公開情報によると、機長の楊鴻達(よう・こうたつ)氏は父親も東方航空の操縦士で、社内で順調に出世していたことが分かっています。しかし、3人の中で職歴が最も長かったのは機長ではなく、副操縦士の張正平(ちょう・せいへい)氏でした。

中国で操縦士として働き、今回墜落した航空機と同型のボーイング737-800の操縦経験も豊富なベテラン操縦士の高飛さんは、MU5735便の操縦士の人事に大きな問題があると指摘しています。

ベテラン操縦士の高飛さん
「(張正平氏は)以前に737型の機長の教官を長年務めた経歴があり、周囲からは「本家本元」とか「大先輩」などと呼ばれるようなベテラン操縦士だ。彼のキャリアを考えると、副操縦士程度のポストしか与えられていないのはおかしい」

公開情報によると、59歳で副操縦士の張正平氏は40年の飛行キャリアを持つベテランで、累積乗務時間は3万時間を超えており、東方航空雲南支社の「五つ星機長」のタイトルを獲得したこともあります。

一方で、機長の楊鴻達氏は32歳で、飛行時間はわずか6000時間あまりに過ぎず、張正平氏の弟子や孫弟子程度の経験しか積んでいません。さらに、定年退職を間近に控えた張正平氏は、事故前にほぼ毎日飛行業務を担っていたことが分かっています。

ベテラン操縦士の高飛さん
「これはちょっと普通ではない。一般的にはこれくらいの年齢になるとあまりたくさん飛ばない。年齢が上がったからだ。一つの企業文化から言えば、年長者を敬い若者を可愛がるべきだ。このようなキャリアを持っている人は尊敬されてしかるべきだ。若い世代と同じように扱い、第一線で一生懸命働かせるのではなく、その経験と知識を伝授して次の世代を養成するのが一般的だ」

中国の旅行・航空業界メディア『環球旅訓(Travel Daily、トラベルデイリー)』は2008年に、雲南航空が東方航空に合併されると、操縦士の待遇は業界トップから「中」又は「下」のレベルまで落ちたと報じています。多くのベテラン機長が軽視されるようになったばかりか、降格された操縦士も出て、雲南航空出身の操縦士の間からは強烈な不満の声が上がっていました。張正平氏もその一人でした。

高飛さんは、張正平氏のような優れた業績を上げた操縦士が副操縦士に降格させられたことを考えると、同氏の心理に不慮の事故を誘発させるような何かが生じていたのではないかとの推測を排除することはできないと考えています。

高飛さんは、長い間差別的な待遇を受け続けていると、多くの操縦士は転職を考えるものだと指摘しています。張正平氏の経歴であれば、好待遇を約束してくれる会社があったはずですが、同氏にはそれができない理由があったと推測されます。中共の民用航空局が2005年に通達した規定によると、操縦士が他社に転職する場合、もといた航空会社に巨額の賠償金を支払う必要があります。東方航空雲南支社の操縦士の鄭宏志氏は、転職したために1257万元(約2億4192万円)の賠償金の支払いを命じられました。

これだけでなく、東方航空は2008年から雲南支社の操縦士に対し、飛行時間に対する賃金の20%から30%を税金として納めるよう要求しており、このことが決定的な打撃になった可能性は否めません。

高飛さんは、今回の事故を他の複数の操縦士と分析した結果、MU5735便の整備やメンテナンスに問題がなく、事故発生当日の天候にも異常がなければ、操縦士のメンタルや精神状態が事故原因の一つとなった可能性があると考えています。高飛さんは、中共当局が実際の調査結果を公開し、多くの疑問に答えてくれることを願っていると話しています。

 
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