習近平の「戦争以外の軍事行動」 ターゲットは台湾?国内?

中国共産党の習近平総書記は、「戦争以外の軍事行動」を認める要綱に署名しました。しかし、この要綱の真の目的は何なのか、将来の台湾侵攻を示唆しているのか。3人の中国問題専門家が分析しました。

習近平総書記は最近、「戦争以外の軍事行動」を可能にする要綱に署名しました。この動きは、ロシアがウクライナ侵攻を戦争ではなく「特別軍事作戦」と表現していることと似ています。多くの人が、中共のこの動きは台湾侵攻のための準備の一部であると推測しています。

また、この要綱は将来の軍事作戦を正当化するためのものであるとの意見もあります。

しかし、作家で中国問題専門家のゴードン・チャン氏は、NTDの番組「チャイナ・インサイダー」の取材に対し、中共は正当性を必要としていないと語っています。

作家・中国問題専門家 ゴードン・チャン氏
「中国(共)は、法律があろうがなかろうが、やりたいことをやろうとする。共産党は法律や条約で縛られることはない。例えば、国連海洋法条約に署名し、批准したにも関わらず、今では条約に違反している。しかも、定期的にそれを繰り返している」

中共は最近、台湾海峡は国際水域ではなく、中国の領土であると繰り返し発言しています。中共の国防部長は、将来起こり得る台湾をめぐる戦争を 「内戦」と表現しました。

この状況について、中国問題アナリストの唐靖遠氏はNTDの中国語番組「フォーカス・トーク」で、次のように述べています。

中国問題アナリスト 唐靖遠氏
「台湾海峡が国際水域でないという中共の発言は、まさに概念を混同させるための典型的なものというか、国際水域の意味合いを歪めている」

国連海洋法条約によると、領海とは、基線または海岸の低潮線(ていちょうせん)から12海里(約22キロ)までの海域です。台湾海峡の最も狭い部分は幅70海里(約130キロ)であるため、この定義には当てはまりません。

作家・中国問題専門家 ゴードン・チャン氏
「人民解放軍は国軍ではないことを人々は忘れている。共産党の軍隊で、中央軍事委員会に仕える軍隊なのだ」

中共は近隣海域への侵略を強めています。

そしてこの新しい要綱は、多くの人にプーチン大統領の特別軍事作戦を連想させました。

ロシアによるウクライナ侵攻は既に4か月も続いています。

唐靖遠氏は、ロシアがウクライナ侵攻を戦争として分類することを断ったのは、他国や国際機関が介入するのを避けるためだと指摘しています。

中国問題アナリスト 唐靖遠氏
「宣戦布告をすれば、すぐに世界大戦になり、全体が制御不能になる。だから、習近平はプーチンの経験から教訓を得て、今回の要綱に事前に署名したのだと思う」

専門家は、将来の侵略の可能性に備えるよう、各国に勧めています。

作家・中国問題専門家 ゴードン・チャン氏
「それは台湾を守り、そして他の地域を守るための準備として、私たちがしなければならないことだ。我々は今夜、覚悟を決めなければならないのだ」

専門家はまた、この要綱は中国国内の世論をターゲットにしている可能性もあると指摘しています。

この要綱は6月15日から施行されました。そのタイミングから、習近平総書記は中共の最大の年次大会である中国共産党第20回全国代表大会を前に、自身の軍事的評価と権力を強化しようとしているのではないかとの見方もあります。

習近平総書記は今秋に予定されている党大会で3期目の続投を目指しています。

さらに、中国では当局の都市封鎖に対し、住民の大規模な抗議活動が起きています。

中国問題評論家の趙培氏は、上海の都市封鎖は実は軍事占領と見なすことができ、それに反発する民衆に対し、この新しい要綱は中共に武力で弾圧するための口実を与える可能性もあると考えています。

中国問題アナリスト 趙培氏
「将来、北京や上海のように数千万人が住む都市で大規模な都市封鎖を行うことが必要になった場合、民衆が言うことを聞かないので、この種の都市封鎖を市全体あるいは全国規模で実施することはできない。ならば、もっと厳しい措置が必要になるのではないか?その場合、地元の武装警察だけで足りるのか?足りないかもしれない。このような状況では軍の力が必要だ。これも、非戦時の軍事行動と言える」

習近平総書記とプーチン大統領の直近の電話会談で、習近平氏はロシアの侵攻を支持する姿勢を示したと報じられています。

中共の新しい要綱が世界の脅威となるかどうかは、まだわかりません。

〈字幕版〉

 
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